『月姫リメイク』感想・評価【トロコン済み・ネタバレ無し】
2021年8月26日に発売され、約1ヶ月後の9月24日には売上が24万本を突破したと報じられた月姫リメイク。同じくゲームブランドTYPE-MOONから発売された『Fate』シリーズと比較しても遜色ない数字となりました。
※参考:『月姫 -A piece of blue glass moon-』の売上が24万本突破。「Fate」シリーズに匹敵する勢い
筆者もその売上に貢献した1人であり、先日ゲームクリア・トロコンまでを済ませました!
(記憶はだいぶ薄れているものの)リメイク前の原作もプレイ済みですので、そのあたりの比較も入れつつ、今作から総入れ替えとなった声優や各ルートの感想などをネタバレ無しでお伝えします。
最後には続編への期待なども入れつつ締めさせてもらいますので、よろしければ最後までお付き合いください。
目次
リメイク版月姫の概要・オリジナル版との変更点について
感想・評価へと入る前に、リメイク版月姫についての概要を記載しておきます。
正式タイトル | 月姫 -A piece of blue glass moon- |
発売日 | 2021年8月26日 |
ジャンル | 伝奇ビジュアルノベル |
ボイス | 有(フルボイス) |
クリア時間目安 | 40~50時間(ボイスを聞く場合) |
ジャンルについて補足しておくと、文章を読む以外に選択肢を選ぶことによるキャラクタールートへの分岐、エンディングへの分岐(バッドエンドも含む)も発生します。恋愛要素が無いわけではありませんが、物語のメインはあくまで発生する事件の解決です。
オリジナル版では1999年が舞台となっていましたが、リメイク版では2010年代へとシフトしている月姫。グラフィック以外にもオリジナル版との変更点がいくつかありますので、前提知識としてそのあたりも説明していきます。
リンク
↑オリジナル版月姫を知りたい方はコミックスで
ルートは2つのみだがボリュームは満点
今作『月姫 -A piece of blue glass moon-』でプレイ出来るのは「アルクェイドルート」と「シエルルート」の2つのみです。
オリジナル版には他のヒロインである秋葉・琥珀・翡翠のルート、いわゆる遠野家ルートがありましたが、今回は攻略不可となっています。
発売前には「分割商法」と言われ最大の批判ポイントとなっていた部分ですが、実際にプレイしてみれば2人のルートだけでもボリュームは並のノベルゲー以上でした。
プレイ時間はゲーム中に出ないため正確な時間は計っていませんが、トロコンまで(全エンディングを見るまで)にはおそらく50時間前後かかっています。
ちなみに、筆者は全てのフローチャートを埋めてはいないため、全選択肢・全シーンを埋めようとすると+10時間程度はかかるでしょう。
声優は総入れ替えで新キャラクターも多数
オリジナル版にはそもそもボイスが入っていなかった月姫ですが、格闘ゲーム『MELTY BLOOD』などの派生作品ではボイス付きで多くのキャラクターが登場していました。そのため、キャラクターの声に馴染みのある方も多いでしょう。
ですが、今作では過去作品に出演していた声優陣を総入れ替えしており、さらに新キャラも多数含まれているということで、リメイクにあたっては思い切った変更が加えられています。
追加キャラで一番大きな影響を与えたのは、オリジナルで存在感を放ったネロ・カオスの代わりに配置されたヴローヴ・アルハンゲリでしょう。
他には、新任教師として主人公の志貴たちがいるクラスへやって来るノエルも出番が多く、ヴローヴとノエルの2人は『MELTY BLOOD』の新作にも参戦しています。
ソフトはZ指定(18才以上のみ対象)
オリジナル版もR-18指定でしたが、今回のリメイク版も「18才以上のみ対象」のZ指定を受けています。特に学生の方はご注意ください。
Z指定の原因はアダルト描写ではなく、出血・切断などの暴力シーンが含まれているためです。月姫ファンからすれば、ごまかさずに正面から描き切ってくれたことは感謝に値するところですが、出血などの描写が苦手な方はお気を付けください。
リンク
リメイク版月姫の個人的感想・評価
ここまでは客観的な内容をメインにお伝えしましたが、以降は個人的な感想・評価を記載していきます。
詳細については以降の各見出しで要素ごとに記載しておりますが、先に5段階評価(★の数で評価:MAX5つ)を入れておきます。大まかな目安としてご覧ください。
シナリオ | ★★★★★ |
キャラクター・声優 | ★★★★★ |
グラフィック | ★★★★☆ |
BGM | ★★★★★ |
システム | ★★★★☆ |
キャラクターの設定に軽く触れることはありますが、物語の核心に迫るネタバレは入れておりません。
他のレビューとは違うことを言っているかもしれませんが、1つの意見として参考にしていただければ幸いです。
シナリオ:アルクェイドルートの感想と評価
充実感の中に寂しさが残るエンディングでした。『Fate/stay night』におけるセイバールートに近い読後感と言えば、伝わる人には伝わるでしょう。筆者はエンディングを見た後、数時間は何もやる気が出ませんでした。
まず、ヒロインのアルクェイドが抜群に良かったです。声優の交代で一番心配だったキャラクターでしたが、上品さやかわいさが存分に出ていて最高でした。
途中にはデート的なイベントもありますが、主人公の志貴とは「戦友」という感じの関係性がメインで、いわゆるキャルゲーのような距離感とは全く違いますね。
ストーリーの大枠はオリジナル版の流れに沿っており昔を懐かしみながらプレイ出来ましたが、キャラクターの変更もあって新鮮な気持ちでもプレイ出来ました。
強いて言えば、後述のシエルルートのエンディングが2つなのに対してアルクェイドルートはエンディングが1つだけなので、もう1種類あれば文句無しだったかもしれません。
シナリオ:シエルルートの感想と評価
シエルルートはノーマル・トゥルー2種類のエンディングがあります。
ノーマルエンドを迎えた後は「これでも十分良いエンディングじゃないか」と感じましたが、その後トゥルーエンドをクリアすると「こっちが間違いなくトゥルーエンドだ」と思わされました。
ただ、どちらのエンディングが好きかは意見が分かれる気がします。違いについてはぜひ各自でお確かめください。
シナリオでは、シエルのカッコ良さが非常に目立ちました。アルクルートは2人が対等な関係性を築いていましたが、シエルは志貴にとって学校の先輩ということもあって、先輩が後輩をリードする場面が多かったです。
オリジナル版とは途中の展開がだいぶ違うので、自分の中のシエル像が大きめに修正された気がします。終盤は先輩・後輩とは違った関係性も見えてきて魅力がさらに倍増でした。
余談ですが筆者はシエルルートのプレイ中、カレーパンにはまりました。キャラの好物にはすぐ影響されます。
新キャラクター【★5つの満点評価】
キャラクターではオリジナル版にいなかった新しい顔ぶれがかなり増えていますが、いずれも物語の雰囲気に溶け込んでいて存在感もありました。
特に、中ボス的な立ち位置で登場するヴローヴは戦闘シーンの盛り上がりに大きく貢献し、口数の少ないキャラクターながらも目立つ存在でした。
代わりにネロの出番が無くなったのは残念ですが、もはやファンの中では強いイメージが完成され過ぎているので、出したら出したで志貴の勝てるビジョンが見えなくなってしまう気もします。
あとは、シエルの所属する聖堂教会サイドのキャラクターが増えたことも、シエルルートのシナリオに厚みが出て好印象でした。
声優【総入れ替えでも★5つ評価】
上でも何度か触れましたが、声優の総入れ替えは結果的に大満足でした。
特にアルクェイドはこれまでの柚木涼香さんがドンピシャすぎて「あの人以外の声が想像出来ない」という状態だったにも関わらず、今作で声を務めた長谷川育美さんは違和感無く溶け込んで来ました。
また、他のキャラクターについても声がイメージに合っているように感じます。全体的に以前とそこまで似ているわけではないのですが、違和感を覚えませんでした。もしかしたら、グラフィックやシナリオも一気に変えたのが功を奏したのかもしれません。
ボリューム・テンポ【2ルートのみでも高評価な理由】
ボイスを聞きながら進めた場合、真っ直ぐエンディングを目指しても40時間程度はかかるでしょう。
ちなみに筆者は、各ルートに20種類以上散りばめられたバッドエンドも回収しながらプレイしていたので、終わるまでに約50時間かかっています。一部のバッドエンドは分岐してからもボリューミーなので、エンディング回収にも割と時間がかかりました。
2ルートのみにも関わらずノベルゲームにしては相当な大ボリュームとなった今作ですが、プレイ中は全然飽きることがありませんでした。
普段あまりノベルゲームをすることが多くない筆者は、連続して3時間もプレイするとたいていしんどくなってくるのですが、月姫は6~7時間ぶっ通しでも問題無かったです。
テンポが気になる方はボイスを飛ばせばさらに短い時間でクリア出来ますが、個人的には各キャラ声優の演技も見事だったので、時間をかけてでもじっくりプレイして欲しいと思います。
グラフィック・演出
グラフィック面に関しては、ずば抜けて良いという程ではないが欠点も無いという感じです。
キャラクターや背景などの静止画については、公式サイトなどを見てもらえれば分かると思いますが全体的にキレイな仕上がりとなっています。
演出面については、会話に合わせてキャラクターの表情もコロコロ変わりますし、戦闘描写にも場面ごとに動きが加えられているので、臨場感がありました。
驚くほどのクオリティではなかったですが、物足りないと言う程ではないでしょう。
BGM
あまり説明をするとネタバレになってしまうのですが、BGMはシーンとのシンクロ率が非常に高かったです。
特に戦闘シーンは素晴らしく、プレイ中はグラフィックの演出よりもBGMによって強く引き込まれていた気がします。中でもヴローヴ関連の曲はどれも印象的でした。
戦闘以外のBGMはあまり意識していなかったですが、改めて聴き直してみると流れていたシーンが思い出されるような曲が多かったです。
システム
システム面は丁寧な作りがとても目立ちました。
例えば、ボイス音量をキャラクターごとに変更できるのはありがたかったです。デフォルトだと声量に少しばらつきがあるように感じられたので、ありがたく調整させていただきました。
また、プレイ中にルート分岐を示したフローチャートが見られるので、見ていないシーンの回収がしやすい作りになっています。
ただ、分岐条件まではさすがに載っていないので、コンプリートを目指すなら攻略を見たほうが良いかもしれません。バッドエンド時には正解ルートへのヒントが出るのでクリア自体は簡単ですが、クリアとは直接関係の無い一部ルートは、フラグがかなり複雑になっているところもあります。
ちなみに、発売直後はテキストの表示不具合など大きめなバグも出ていましたが、現在は修正された様子です。筆者はクリアまでバグと思われる症状には遭遇しませんでした。
月姫リメイクの続編に期待すること
今作で描かれなかった残りのルートについては次回作での展開が予定されていますが、発売時期は2021年11月現在において未定です。
今作の発売直後には「これから制作が始まる」ような内容を開発陣がインタビューで語っていることから、少なくとも2~3年はかかると思われます。
残り1作で全て完結させるとも言い切ってはいないのも不安ですし、出来るだけ早く大まかなスケジュールをはっきりさせて欲しいというのが正直な思いです。
実は、今作においてバッドも含めたエンディングを全種類見ることで、次回作に関するおまけ映像を見られるのですが、これを見ると作ろうとしている強い意志を感じることは出来ます。
想定されていた秋葉・琥珀・翡翠ルートに加えて+αとなる映像も入っていたので、発売を気長に待ちたいところです。
月姫リメイクの感想・評価まとめ
約20年越しとなった月姫リメイクでしたが、次回作の発売が決まっていないことを除けば大満足でした。最後に、それぞれの要素を振り返りましょう。
次回作の発売は未定ですが、思い返してみれば「月姫リメイク」の話が最初に出たのは2008年頃で、そこから発売までに13年かかりました。さすがに次はそこまで待ちたくないですが、同じような気持ちで期待せずに待っていようと思います。
リンク
コメント